弟は何かを企んでいる12

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 まぁいいか、と思ってしまったのが多分伝わって、嬉しそうな笑顔が近づいてくる。チュッと唇を吸われて、大好きと囁かれて、俺も好きだと返せば、相手を包む甘やかな気配が濃くなった。
「ね、しっかり捕まって。声、気をつける努力だけ、して」
 ちょっとくらいなら声出ちゃっていいし、辛かったら俺の事噛んでもいいよ。と促されて、ギュッと抱きつく腕に力を込めながら相手の肩の辺りに口元を押し付けてやる。噛むかはともかく、自力で口を閉じるよりは楽そうだと思ったからだけど、相手の服に口を押し付けたせいで香った匂いにクラリと脳内が揺れる気がした。
 ベッドのシーツや枕カバーや致す時に用意されるタオル類も、同じ洗剤が使われているのだから当然なんだけど、こんな場所でこんな体勢なのに、ベッドの中にいるときと同じ香りに包まれて、脳内が錯覚を起こしている。
 これはちょっとまずいかも、と思ったけれど、それを訴えるより早くもう片足を抱え上げられて、ええっと焦ると同時に深くまで挿入されてしまって頭の中が白く爆ぜた。
「ふううううっっ」
「痛っ」
 声を出したらまずいという気持ちだけはなんとか働いて、噛むつもりなんかなかったのに、必死で眼の前の肉に齧り付いて衝撃をやり過ごす。体が勝手に震えて、というよりは内側がキュウキュウと相手のペニスを絞るのを止められなくて、つまりは、多分、イッてしまった。しかももしかしなくても、射精はしてない気がする。
 朝もあまり出なかったけれど、そのせいもあって日中に追加の射精はさせられなかったのに。だから出ないほど出し切ってるってこともないと思うのに。朝以上に、出た感覚が殆どなかった。
「もしかして、イッた?」
 笑うみたいな囁きが耳にとろりと流れ込んできて、必死に頷いて見せれば、動かないからちょっと顔上げてよとお願いされてしまう。見せたくない気持ちと、見て欲しい気持ちとが少しだけ競り合って、でもすぐに、見て欲しい気持ちが勝ってしまって顔を上げる。
 酷い顔をしてる自覚はあるけれど、それを酷い顔だと指摘されないことはわかっていた。というよりは、可愛くて仕方がないと思われて、相手の興奮が増すことを、知ってしまっている。
「ん、ふふ、トロトロの顔、かわいいな。奥、挿れられただけでイッちゃうのなんて、初めてだろ?」
 すげぇ嬉しいと笑う相手の顔だって、かなりトロトロに脂下がっているから、嬉しいのはこっちも一緒と思ってしまう。
「なぁ、奥、めちゃくちゃ感じてるっぽいけど、このまま優しくトントンして、いい?」
 射精なしでイッちゃうかもで怖いかと聞かれて、イッたのはわかっててもトコロテンしたと思われてるらしいと気づく。
 射精を伴わない絶頂でイキッぱなしになるのはどうしたって怖さがあって、奥で感じられるようになってきても、しつこく奥ばかりを優しく捏ねられるのは避けていた。そうそう何度も抱き潰されるわけにはいかない、抱き潰すわけにはいかない、という双方の思惑が一致していて、だからこそ、一度は経験したのにずっと二度目に踏み込めない。という状態は、間違いなくここにも影響していた。
 射精なしでイキッぱなしになれば、また奥が開く可能性だって高いのはわかっている。でもそこにすら、躊躇ってしまって到達できていなかった。
 このおためし同棲みたいな期間でそこを超えるつもりでいたし、もう一度抱き潰されようともしていたのだから、こちらとしてはもっとされたいのが正直な気持ちだ。
 優しくとんとん捏ねられて、イキっぱなしにして欲しいし、それで奥が開いたら奥まで来て欲しいとも思う。でも、抱き潰す気がないなら、何度も射精なしの絶頂をさせる気はないんだろうな、とも思ってしまう。
 イキッぱなしになるも怖いけど、今はそれよりも、そうなれないまま終わられるのが怖い。体の負担を考えてここまでにしとこうか、って、優しい気遣いで引かれてしまうのが怖い。
 弟が思うよりもずっと、既に体はエロエロに変えられているし、それを持て余している。
「怖いなら無理しなくていーよ。大丈夫。いつも通り、って言うには状況違いすぎるけど、ちゃんと一緒に気持ちよくなれるし、するからさ」
 じわっと目に涙がたまり始めると同時に、弟が安心してというようにそう口にしたけれど。
「ち、ちがっ、ちがう、されたい、してっ」
 やっぱり期待する気持ちのほうが強くて、慌ててして欲しいと縋ってしまった。
「それ、本気で言ってる?」
「ん、本気。されたい。したい。けど」
「けど?」
「ばしょ、ベッドが良い。し、出来ればその先まで、されたい」
 お願い抱き潰して、と、とうとう口に出してしまえば、やはり随分と驚かせてしまったらしい。

続きました→

 
 
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